校長の東です。
先日、「スライ&ザ・ファミリー・ストーン」というバンドを率いた、スライ・ストーンが亡くなりました。
スライは、自分にとって、本当に多くの音楽的な学びをくれたミュージッシャンであり、それまでの音楽的な価値観をひっくり返すくらいの衝撃を与えてくれた、破壊神みたいな存在でした。
そして、笑顔が最高にキュートなアイドルでした。
今回は、自分にとっての「スライ&ザ・ファミリー・ストーン」について、コラムを書きたいと思います。
■出会い
「スライ&ザ・ファミリー・ストーン」を知ったのは、高校1年の時。
一緒にバンドをやっていた友人が買ってきたCDを一緒に聞いたのが最初でした。
当時の自分達は、色々な音楽に貪欲で「ジャズ」「ブルース」「ソウル」「ロック」「ハードロック・ヘビメタ」「プログレッシブロック」などなど、聞けるものはどんなものでも貪るように聞いていました。
今と違って、インターネットが普及しておらず、YouTubeも無ければ、サブスクで音楽の聞きき放題がない時代。
先輩にCDを借りる。
知り合いの「音楽オジサン」にカセットテープに色々録音してもらう。
CDをレンタルしてMD(90年代に流行った記録媒体)に録音する。
気合いでCDを買う。
という、あらゆる手段を尽くして、音楽を聞いていました。
CDレンタルと購入は、高校生の自分達には贅沢でしたが、ライナーノーツといって、音楽ライターさんがアーティストやアルバム、楽曲ついて細かく解説してくれている読み物がついていたので、作品やアーティストを深く知れて贅沢でした。
当時は今よりも、音楽やそれに関わる情報は「高価で貴重」だったんです。
バンドメンバーでベーシストの友人は、『「スライ&ザ・ファミリー・ストーン」のベースは有名なベーシストらしい!』という情報を入手し、気合を入れてCDを購入したのでした。
ワクワクしながら2人でCDを聞き、愕然としたのを覚えています。
その音楽は、当時15歳そこらの滋賀のバンドキッズには、あまりにも難解な音楽でした。
しかし・・・
数千円で購入したCD!
有名なベーシストが弾いている!
理解したい!
意味わからなくても聞くしかない!
ということで、しばらくの間は、CD購入の元を取るべく、複雑な気持ちで、我慢しながら聞いていました。
ずっと「何じゃこりゃ?」と思っていました。
それが、このアルバムです。
『暴動 (There’s A Riot Goin’ On) 』
※動画の音源は、アルバム「暴動」の一曲目のトラック「Luv N’ Haight」。曲が流れると未だに当時の気持ちを思い出します。
■別れからの再会
それから、自分たちの間では『「スライ&ザ・ファミリー・ストーン」は、意味わからんバンド(笑)』という認識になってしまい、すっかりスライを聞くことはなくなってしまいました。。
しかし、様々なCDについてくるライナーノーツに、「スライ&ザ・ファミリー・ストーン」「スライ・ストーン」が出てきます。
キーワードは、「ロック」「ファンク」この2つ。
あれがロック?
ロックバンドは、ビートルズ、ローリングストーンズ、ディープパープル、レッドツェッペリンとかのイメージ。
ファンクってあの音楽が?
ファンクは、ジェームス・ブラウンのイメージ、なんか違う感じがする。
ロック史の中では凄く重要なポジションを担っており、とても高い評価を得ているが・・・
僕はそれが理解できなかった。
理解したかった。
そんなモヤモヤがずっとありました。
時は流れ、バンド練習で使用していたリハーサルスタジオに飾ってあるレコードに目が止まります。
カッコいいジャケット!
なんか文字が書いてある・・・
「SLY AND THE FAMILY STONE ANTHOLOGY」
これって「スライ&ザ・ファミリー・ストーン」ちゃうんか!?
再会してしまった、スライに。
初めて聞いたアルバム「暴動」。
我慢して、頑張って聞いた「暴動」。
結局理解できなかった「暴動」。
ちょっとしたトラウマ「暴動」。
このレコード「アンソロジー」ということは、ベスト盤!?
気になる・・・
ずっとモヤモヤしていた「スライ&ザ・ファミリー・ストーン」にもう一度チャレンジしようと、後日、TSUTAYAのレンタルコーナーで探すことになります。
「アンソロジー」を発見。
不安な気持ちと期待の入り混じった妙な感覚のまま、家のCDプレーヤーで聞きました。
完全に聞き入ってしました。
おもちゃ箱をひっくり返したような、個性豊かな楽曲。
聞いたことのないバンドアレンジ、サウンド。
強力なメッセージにファニーなサウンド。
シュールで毒々しいサウンド。
一曲づつ、じっくりトラックを聞き進め、「スライ&ザ・ファミリー・ストーン」の歴史を共に歩んでいきます。
そして、アルバム「暴動」に収録されているトラックが流れはじめました。
「うわぁ・・・スゲェ・・・」
ゾワゾワする感覚に襲われたことを覚えています。
「暴動」を初めて聞いたあの時から、さらに様々な音楽を聞き漁り、知識が増え、それから「アンソロジー」でスライの音楽的な歩みを聞き、ようやっと「暴動」の凄まじさを感じたのです。
いや「感じた」というのが陳腐に感じるほど体の中が震え、ドキドキが溢れ出るような体験でした。
■アイドル
それ以降、お小遣いを貯めては、レンタルではなくCD購入を繰り返し「スライ&ザ・ファミリー・ストーン」コレクションを増やしました。
VHSでも映像を探しました。
ベースの彼が「すごいベーシスト」と言っていた、ラリー・グラハムの音源も色々聞きました。
「スライ&ザ・ファミリー・ストーン」は、当時のアメリカでは前衛的なバンド構成で、男女混合、白人、黒人、ヒスパニックなど人種混合のバンドメンバー。
メンバー構成だけでも、唯一無二の個性と強いメッセージを表現しています。
楽器はギター、ベース、ドラム、オルガン、ホーンセクション、タンバリン、ハーモニカ、シンセサイザー。
ボーカルは誰が歌い始めるか分からない。
叫ぶ、唸る、何でもあり。
性別、人種、楽器の境界線がなく、全員でハッピーにパフォーマンスをするバンド。
ハッピーだけじゃない、重苦しい曲もシュールな曲もある。
楽器のピッチが微妙にズレているのに、全体のバランスで心地よいサウンド仕上げてしまう。
グルーヴを体現したようなエネルギッシュな演奏。
どの楽曲もスライの愛嬌抜群のキャラクター、存在感が映えている。
そんなスライに「底抜けの明るさには、底が見えない深い闇がある」ということを教えてもらった。
音楽・表現を自由に行うということは、どういうことかを教えてもらった。
感性の幅を、思いっきり広げてもらった。
自分にとってのアイドル。
青春の1ページ。
ありがとう。
スライ・ストーン。
ご冥福をお祈りします。
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