校長の東です。
「感情を込めて歌う」という言葉を聞いたことがありますか?
私は「感情を込めて歌う」という言葉が昔からあまり好きではありません。
なぜ好きじゃないのか?
じゃあどうやって感情表現すればいいのか?
コレについてコラムを記したいと思います。
■「感情を込める」が好きじゃない理由
昔から「感情を込める」という言葉が苦手で「感情を込めて歌う」人も苦手でした。
今は、随分丸くなったので(笑)、「感情を込めて歌ってるんだろうなぁ」「一生懸命でいいなぁ」と、好感が持てるくらいに成長したと自負しています。
なぜ「感情を込める」が好きじゃないのか、いくつか理由があります。
①「感情」を「喜怒哀楽」のように、すごく単純化していて逆に陳腐に感じる。
未就学児や小学低学年の合唱のように「元気に楽しく歌いましょう!」と変わらないじゃん・・・と、昔は思っていました(笑)
②「感情を込める」と「自分に酔う」に区別がないように感じる。
「自分に酔っている」ように感じてしまう歌は、聞いていてキツイ・・・と、昔は感じていました(笑)
③「感情を込める」が大切!歌に重要なのは「心」「気持ち」だ!に疑問を持っていた。
技術は二の次だ・・・という感じが昔は嫌いでした(笑)
■大切なのは「意図」
例えば、少し古くて中には知らない人もいるかもしれないですが・・・
尾崎豊さんの「I Love You」の歌い出し、
“I love you 今だけは悲しい歌 聞きたくないよ”
このフレーズを使って考えてみましょう。
先ほどの、①のように「喜怒哀楽」の4つの内の何かに当てはめて歌ったら、薄っぺらくないですか?
彼女と2人きりの電気が消えた薄暗い部屋。
2人寄り添っていて、今、彼女は静かに寝入った。
その瞬間「愛してるよ」が込み上げてきた。
さぁ!歌ってみましょう!
どうでしょうか・・・
表情も、身振りも、声質も、歌い方も湧き上がるものがありませんか?
「愛してる」は、「愛してる」です。
他の感情に置き換えられません。
その「愛してる」「I love you」を表現するため、楽曲の世界を深堀りしました。
これが「意図」です。
「感情を込める」よりもはるかに、深みのある表現ができると思います。
■「聞き手を酔わせる」という「意図」を持つ
②のように「感情を込める」を実践しようとして「自分に酔っている」状態の人の、「I Love You」をフルコーラス聞くのは正直しんどいです。
ここでも「意図」を大切にします。
どのように歌えば、聞き手に楽曲を伝わるのか?
楽曲の深掘り、登場人物のプロファイリング、または楽曲製作者の意図を想像する、そこから込み上げる何かを表現する。
その歌が、たとえ芝居じみていても、自分の表現しようとしているものが聞き手に伝わればいいのです。
これで自分の表現は伝わるのか?
自分は最適な表現ができているのか?
このように自分のパフォーマンスを、客観的に見続けることも「自分に酔う」状態を回避できます。
自分ではなく「聞き手を酔わせる」。
そういう「意図」が大切です。
■音楽には「心」も大切「技術」も大切
③のように歌に重要なのは「感情」「心」「気持ち」で、ヘンテコな歌い方になってもいいでしょうか?
「感情を込める」という、薄っぺらいモノを優先順位の上位に持ってきて、聞き手のことは考えず、独りよがりになってしまっているボーカリストを、たくさん見てきました。
そういうボーカリストに限って、「技術」より「感情」「心」「気持ち」が大切だと言ったり、それらしいことを言ったりしました。
確かに、前に記した通り歌では「心情」というか、湧き上がるもの、込み上げてくるものを表現します。
でもそれを表現するための「技術」も大切にするべきだと思います。
「技術」を持って、目に見えない「心情」を、さらに繊細に深く表現していく。
ぶっちゃけ「感情を込めて」歌わなくても、今日の晩御飯のことを考えながらでも、聞き手に何かを伝える「技術」はあります(笑)
というか、そもそも「技術」を習得したい、もっと上手くなりたい、もっと表現力を磨きたいという「姿勢」自体が大切だし、そういう直向きなボーカリストの歌はグッとくるものがあります。
カラオケで楽しく、ワイワイ歌う分には「感情を込めて」歌って、「自分に酔って」いいと思います。
何も難しく考えず、歌を楽しめれば最高です。
しかし、カラオケレベルから一歩先へ行きたい人、表現者としてレベルアップを目指している人は少し気にするといいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回のコラムをお楽しみに。
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